小型犬の膝蓋骨脱臼

こんにちは。4月に入ってからは狂犬病の予防接種とフィラリア検査・予防の患者さんで混雑しております。特に週末は待ち時間も長くなる傾向があり、皆様にご迷惑をおかけてしております。

本日の話題は『膝蓋骨脱臼』という病気です。トイプードルやチワワといったいわゆるトイ種の小型犬の膝関節に生じる整形外科疾患ですね。ちなみに膝蓋骨というのは
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コレです。画像が小さいのでわかりづらいですが、膝関節の上に乗っかっている楕円形の小さな骨です。膝関節を横方向から見ると
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矢印で示された膝関節の上に乗っかるように見えている小さな骨です。この膝蓋骨は大腿四頭筋の動きを足先に伝える役割の一端を担っている大事な骨なんです。大腿四頭筋というのは太腿の前面にある大きな筋肉で、足を強く蹴りだしたり、歩くために足先を前に出す動きをするための筋肉です。サッカー選手のモモが筋肉で盛り上がっているのはこの大腿四頭筋が大きく発達しているためです。

膝蓋骨は大腿骨にある滑車溝とよばれる溝のうえを上下に動くようにできているのですが、トイ種の小型犬では先天的に滑車溝が浅いことが多く、溝から内側に向かって膝蓋骨が外れてしまった状態を膝蓋骨脱臼といいます。実際には膝関節を取り巻く筋肉や靭帯なども関係した複雑な病態なのですが、簡単に言ってしまうと溝が浅いために膝蓋骨がズレてしまうんだよ、という説明になります。
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コレが膝蓋骨が脱臼している状態です。黄色い矢印の右膝は正常ですが、赤い矢印の左膝の膝蓋骨は内側にむかって外れているのがわかりますか?

膝蓋骨脱臼は必ずしも症状が出るわけではなく、全員が手術を受けなければならないわけでもありません。膝蓋骨脱臼があっても普通に生活しているわんちゃんは沢山います。この病気はその程度によってグレード1~4まで、4段階に分類されています。グレード1が一番軽症で、グレード4は重度の膝蓋骨脱臼というわけです。診察室で良く出会うのはグレード2に分類されるワンちゃんたちで、無症状のこともあれば、痛がってキャンキャンないたり、時々びっこがみられるだけの患者さんもいたり、じつに様々です。ただ、今時はご自分で情報を集めている方も多く、診察室では『うちの子の膝は大丈夫ですか?』と聞かれることも多いですね。

時々痛がる・びっこがある・抱っこしたときに膝がポキポキいう、などの症状がある場合には、一度お近くの動物病院で診察を受けることをお勧め致します。病院ではお家での状態を聞かせて頂き、膝をよく触診させてもらったり、歩き方を見せてもらうことになります。場合によってはレントゲン検査をおこなうこともあります。関節の状態を把握させていただいた上で、治療の必要性の有無や、今後の経過観察について説明させていただくことになります。

万が一、手術が必要な場合にはお勧めすることになりますが、膝蓋骨脱臼の術式はやや複雑で、必要な術式は個々の患者さんによって若干変わります。造溝術というって溝を深くしたり、膝蓋骨を内側に引っ張る縫工筋や内側広筋を処置したり、関節包を縫い縮めたり、靭帯の付着部である脛骨粗面の骨切りをして大腿四頭筋~膝蓋骨~脛骨粗面のアライメントを正常化させたり、手術の最中に膝の安定性を何度も確認しながら必要な処置を行っていくわけです。造溝術では
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こうして膝関節の軟骨を持ち上げて、下の骨を削って深くしてから軟骨を戻します。手術後のレントゲン像はこんな感じです。
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この患者さんでは造溝術から脛骨粗面の転移術まで実施しました。術後数日で退院して、1週間後にはややぎこちないながらも普通に歩いてくれます。手術から1~2か月後には普通のわんちゃんと同じようにお散歩しながら生活できますね。病院では手術が不要と思われる患者さんにはもちろん手術はお勧めしません。ですが手術が必要と判断された患者さんには、その必要性と前十字靭帯の断裂などの将来的な併発疾患のリスクに関してご説明させていただき、飼い主の皆様に病気を正しく理解していただいてから手術を実施しています。

さて今回は少し長めの真面目なお話でした。最近は整形外科の手術も大分多くなってきました。まだすべての手術に対応できるほど院内設備が充実しているわけではありませんが、設備に関しては現在鋭意充実中であります。また、別の手術に関しても機会がありましたらご紹介させていただこうと思います。

 

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