猫の骨盤骨折/仙腸関節脱臼
今回はのら猫ちゃんの交通事故症例です。いつも人懐こい猫ちゃんがずっと動かないのをみて心配になった方が連れてきてくれました。
来院時にはお腹が大きく、ぐったりしていました。ひと通り検査してみたところ骨盤骨折を生じており、お腹には2頭の胎児がおりましたが事故の影響ですでに心拍は停止しておりました。胎児はあきらめる以外にありませんが、母体は助けてあげたいと言ってくださりそのまま入院となりました。
こちらは初診時のレントゲン画像です。骨折により骨盤が狭くなってしまい、これでは歩けないのはもちろん、ウンチをすることもお腹の胎児をだすこともできない状態でした。交通事故の際にはどうやら頭も打っていたらしく、左右の瞳孔の大きさも違っていました。数日間の入院治療により頭の外傷に関しては改善がみられ、全身麻酔がかけられる状態になった時点で骨盤の手術と避妊手術を行いました。
骨盤と背骨は仙腸関節と呼ばれる関節で繋がっています。この仙腸関節は仙骨と呼ばれる腰骨と、腸骨という骨盤の骨をつなぐ関節であり、この猫ちゃんのようなケースでは仙腸関節の脱臼をきちんと整復してあげることで歩行や排便が可能となり、きちんと元の生活に戻ることができるようになります。
こちらが手術後のレントゲン画像です。整形外科用のスクリューを使用して左右の仙腸関節脱臼を整復しました。この関節が元の形に整復されると必然的に骨盤の形状も正常に復します。手術前はまったく歩けなかった猫ちゃんも、術後3日目くらいには自分で歩いてトイレでおしっことウンチができるようになりました。骨盤が安定するまでにはまだしばらく時間が必要ですが、拾ってくださった方がご自分の猫として保護してくださるとのことですので、まずは一安心です。
手術後のご本人の登場です。カメラのレンズに鼻を押し付けてみたり、あちこち動き回るのでなかなかシャッターチャンスが作れません。僕の腕前ではこの写真が限界です。逆さまになってゴロゴロしながら甘えん坊しています。
のら猫の交通事故は本当に痛ましいことですが、動物病院ではよく遭遇する出来事でもあります。今回もまた、地域の皆様の温かい支えがあって一つの命が助かりました。本当にありがとうございました。