歯磨きの話

本日は『歯磨き』の話です。

飼い主の皆様と話をしていると、多くの方が歯磨きに興味があるようですね。診察の際によく相談を受けるのですが、歯磨きに興味はあるものの実際に歯磨きをおこなうのは敷居が高いと感じておられる方がほとんどのようです。実際に歯磨きにチャレンジしたけど挫折した方々も多いようですね。

なので今回は、これを読んでくださっている飼い主さんと一緒に歯磨きトレーニングを始めたいと思います。因みにゴールが『歯磨きできるようになる』ことなので、歯ブラシの登場はずっと後になります。まだ歯磨きグッズを準備してなくても大丈夫です。ペットの歯磨きをしたいという健康に対する意識が高い皆様でも、歯磨きが上手くいかない理由はただ一つです。ハミガキする→イヌイヤがる→ハミガキする→イヌハミガキキライになる→ハミガキ挫折スル、という経路ではないでしょうか。無理やりでは長続きしませんから、スキンシップのつもりで、できれば楽しく毎日できるように頑張りましょう。最終的にハミガキできるようになるかはやってみなければ分かりませんが、トライしなければ結果はついてきませんからね。

今回のモデルも当院の看板娘ララちゃんです。一足お先に昨年の夏に歯磨き訓練して、2ヶ月くらいでほぼ訓練完了しました。最初は嫌がって逃げたり、頭を振って抵抗したりしていたララちゃんも、今では自分から足元に寄ってきます。歯磨きジェルの味が好きなのと、歯磨きのあとにもらえるご褒美が嬉しくて、ちょっと歯磨きが好きになってきたみたいですよ。実はご褒美もデンタルガムなのですが、ご本人はとても嬉しそうに食べています。

まず最初はマズルに触れる訓練から(訓練開始から1~2週間目くらいまで)

えっ、そこから?と思うかも知れませんが、ココからです。すごく大事な第一歩です。”うちの子は鼻くらい触れるよ”って方も、違和感なく普通に触れるようになりましょう。

宮川のほとり動物病院,歯磨き訓練1


寝ているところを起こされて、突然マズルを掴まれたのでさすがのララちゃんもびっくりして目が丸くなってますが、それでも嫌がりません。皆さんの第一目標はこの状態です。普通のワンちゃんはマズルを掴まれるのイヤだと思います。なので最初はこんなにしっかり掴まないで、まずは軽く触れることから。【お手】や【お座り】と一緒です。鼻に触れたら、ご褒美のおやつを与えて褒めてあげてください。繰り返すうちにおやつが欲しくて、褒めてほしくて、大丈夫になるはずです。慣れてきたら、少しずつ触る時間を長くして、”触れる”ことから”軽く顎をもつ”ことへと移行してみてください。

大事なことは焦らず時間をかけること。1回あたりの訓練には時間をかけずに、1日のうちに何度か、数週間かかって構いませんので慣れさせてあげてください。

第2段階:口唇をめくって歯をみせる訓練(訓練開始2~4週間目くらいまで)

宮川のほとり動物病院,歯磨き

違和感なくマズルを触れるようになったら、さあ第2段階です。まずは鼻先の口唇をめくって前歯をみれるように。それができるようになったら次は真ん中あたりの歯がみえるように。写真ではララちゃんがすごい顔になってますが、これでも大人しくしてくれています。最終的にこうやってイーッてして奥歯まで覗けるようになったら第2段階も終了です。この段階も焦らず急がず、場合によっては数週間かかってもいいんです。大事なことは、嫌がる犬の唇をめくってホラできた~、ではなくてわんちゃんが嫌がらず、できればご褒美が欲しくて、褒めてほしくて当たり前のようにできるようになることです。ここまでできるようになればしめたものです。次の段階からは実際に歯ブラシの登場ですよ。

第3段階:歯ブラシを持ちながら第2段階までの反復練習(第1~2段階と同じくらいの時間をかけましょう)

次に段階は第2段階の延長線上にあります。歯ブラシや歯磨きシートを実際に手に持ったまま、口唇をめくる練習です。この段階の目的は、口唇の操作にさらに慣れてもらうことと、歯ブラシに対する警戒心が起こらないように、見慣れたものにすることにあります。できればこの段階からは少しずつ歯を見せる時間を長くとるようにしてみてください。

第4段階:実際に歯ブラシを当てる練習

やっとここまできましたが、ここからはワンちゃんの歯に実施に歯ブラシを触れさせる大事な段階です。歯磨きグッズは沢山販売されていますが、主に歯ブラシと指に巻いて/はめて使うタイプのどちらかになります。指タイプのものは口に入れても違和感が少なく、広い範囲を短時間で歯磨きするのに便利な反面、歯と歯の隙間を綺麗にするのは難しいです。それに対して歯ブラシタイプは違和感こそ強いものの、細かい部分の歯垢を落とすには非常に便利です。

宮川のほとり動物病院
上から1、ヒト用歯ブラシ、2、犬用歯ブラシ、3指タイプ歯ブラシです。一番上の歯ブラシはヒト用のもので今現在ララちゃんが使用しているものです。

最終段階:歯みがきを始めましょう

ここまで到達できましたか?。わんちゃんも偉いですが、根気よくここまで訓練してくださった飼い主の皆様も優秀です。ここまでの訓練でわんちゃんとの絆も深まっていることと思います。

当院では入門編として指タイプの歯磨きをお勧めしています。指タイプで問題なく歯磨きができるようになったら、中級編として歯ブラシの導入考えて頂き、歯磨き上級者になったら指タイプで全体を綺麗にした後に歯ブラシで歯の間の歯垢を落とすという、2段構えの歯磨きができたら完璧ですね。ララちゃんは指タイプ→歯ブラシ→ご褒美にデンタルガムの順番で毎朝喜んでくれています。ま、どちらかというとご褒美が欲しくて歯磨きを我慢しているんでしょうけど、毎朝”歯磨きしてくれよ~”って催促してくるので歯磨きするしかないんです。でもここまできたら一生涯歯磨きするのは大丈夫ですよね。

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