のら猫を保護してくださる方々へ

最近はノラ猫・捨て猫ちゃんを保護してくださる方が沢山ご来院されます。
そのほとんどが生後3か月未満の仔猫さんですが、中には生後10日程度と思われる本当に小さなお子様猫を保護してくださる方もおります。

そして嬉しいことに、そうやって見知らぬ仔猫を放っておけずに保護してくださった方の全員が、仔猫の人生をきちんと背負って家族に迎え入れる決意を固めておられます。

猫は大事に育てれば10年、15年以上生きます。中には20歳以上になるご長寿もいます。
その反面、飢えや寒さが原因で淘汰されてしまうのら猫の寿命は数年しかないと言われています。
保護された仔猫たちの中にも、手厚い看病がなければ数日以内に命を落としていたと思われる子が何頭もおりました。この場を借りて改めてお礼を申し上げます。保護してくださってありがとうございます。

のら猫を保護するにあたって、病院として考えておきたいことを記載しておきたいと思います。

まずは寄生虫です。外で生きる猫ちゃんには寄生虫は当たり前といっていいくらいよく見られます。
代表的なのは『ノミ』『ミミダニ』、そして回虫やマンソン裂頭条虫に代表される『消化管内寄生虫』です。これらはもし見つかってもお薬で比較的容易に駆除できるので、まずはきちんと病院で検査しましょう。特にノミは部屋に入ってしまうとヒトへの被害も大きいので、例えノミが見つからなくても駆除しておくことをお勧めします。

次に心配なのが猫白血病ウイルスと猫エイズウイルスです。
この両者は地域差がありますが、のら猫の一定数が保有している代表的なウイルスです。感染してもすぐに症状はでませんが、数年後であっても発症した場合には命とりになる重大な疾患です。動物病院では数滴程度の血液があれば10分程度で感染を確認できるので、これも絶対に検査しておきましょう。

そして最も多い疾患といっても過言ではない、いわゆる『猫カゼ』です。
代表的な猫カゼは猫伝染性鼻気管炎ウイルス(猫ヘルペスウイルス)と猫カリシウイルスによる感染症です。目ヤニや鼻汁、くしゃみ等の症状がある場合には動物病院に相談しましょう。猫カゼはよほどこじらせない限り命にかかわることは少ないですが、慢性化したり、ウイルスキャリアになったり、口内炎などの併発疾患を招いたりと、厄介な場合が多いです。また他の猫に容易にうつってしまうので、自宅にワクチン未接種の猫がいる場合にはカゼの症状を確認するために、しばらくは隔離しておく必要があります。

その他、よく聞かれるのは以下の質問でしょうか。
・ミルクはいつまで必要ですか
・いつからドライフードにすれば良いですか
・爪切りはどうしたらよいでしょうか
・ワクチンは必要ですか

ミルク主体の哺乳は生後3~4週間目くらいまでは必要です。哺乳が必要な時期の仔猫は、哺乳後に毎回、お尻の周りを人肌程度の温かさに湿らせたガーゼやティッシュなどで優しく刺激してやり、おしっこやウンチを促してあげる必要があります。生後4週間前後になると、ミルク以外の食餌に興味が出てくると思いますので、最初は仔猫用のウェットフードやドライフードをお湯や猫用ミルクでふやかして与えるとよいです。この頃には常に器で水が飲めるようにしておくことも忘れずに。

そして生後6~8週間を目安に、ドライフード主体の食餌に切り替えていきます。ふやかしフードから急にドライフードに切り替えてしまうとお腹をこわす仔猫がいますので、1週間くらいかけて徐々に完全なドライフード食に切り替えてあげてください。

爪切りはおとなしい猫ちゃんは自宅でもできますが、やはり難しい場合が多いと思います。動物病院は『爪切りだけ』で受診しても全然大丈夫です。ついでに先生にはわからないことを全部聞いておきましょう。そしてワクチンは、室内飼育であってもやはり必要です。

長くなりましたが、最後に。
仔猫(仔犬もですが)はどんどん体重が増えて大きくなります。すこし大げさに言えば、毎日少しずつ大きくなるのがわかるくらいです。体重が増えて体が大きくなれば、当然それに合わせて食餌の量も増やさなければなりませんし、首輪もきつくなるので大きくする必要があります。知らぬ間にご飯が足りなくなっていたり、首が閉まっていることがないように、2週間に一度は食餌の量と首輪のサイズを見直してあげてくださいね。これ、意外と盲点です。

 

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